報告:柳瀬健吾(佐賀ビックフット)
8月25日 佐賀メートプラザにて、自死遺族支援全国キャラバンin佐賀
〜自殺を「語ることのできる死」へ〜 が佐賀県・佐賀ビッグフットの共催で開催された。
このブログでは、シンポジウムの報告と、開催に掛けた「私なりの思い」を織り交ぜながら報告したいと思う。
今回のシンポジウムは、佐賀では初めての「官民合同」で主催するシンポジウムであり、何よりも今後につなげていくための「信頼関係」を構築することが大切であった。開催に向け、幾度と打合せを行っていく中で、私たち民間に出来ること(シンポ構成・役割分担・資料作成…)行政が出来ること(パネリスト調整・会場準備・配布資料収集・印刷…)を一つずつ確認しながら、互いが補いあい、シンポジウム開催という目的に向かって「共に取り組んでいく」という意識を醸成していく。「自殺対策」そして、シンポジウム開催に向けた私たちの思いをしっかりと伝え、実現に向けた調整を行う。 それは、この「シンポジウム」を官民協働で成功させることで、今後の「地域」の自殺対策に必ず大きな恩恵を及ぼすと感じていた。地域の自殺対策は、健全なセーフティネットによって土台が構築される、その基礎となるのが「官民」の連携であると信じて疑わないからだ。
開会では、坂井副知事が主催者挨拶を行い、このシンポジウムが官民合同で開催された事を報告した上で、「これが、自死遺族の苦痛を和らげるための「分かち合いの会」立ち上げの契機になることを願いつつ、もはや他人事ではない自殺について、県民一人ひとりが正しい認識を持って、自殺対策の主役として取り組んでいただく一歩にしていただきたい」と伝えた。
第一部は、「国における自殺対策の取り組み」と題し、内閣府自殺対策推進室長の柴田雅人さんより、6月に閣議決定された「自殺総合対策大綱」の説明を頂いた。「自殺は個人の自由な意思や選択に思われがちだが、実際には、様々な要因が複雑に関係して心理的に追い込まれた末の死であること」を会場に伝えた上で、「当面の重点施策」の詳細を説明、特筆すべき点は「自殺の実態を明らかにする事が効果的な対策を生む上では重要であるという認識を持っており、今後、民間とも連携して進めていく」と約束され、その間、手を拱くのではなく、諸外国の成果、現段階の研究結果をもとに対策を進めていくとのこと。丁寧に説明いただき、出席者からは「分かりやすかった」との声が多く聞かれた。
第二部は、遺族メッセージ。「佐賀ビッグフット」の古賀寛子さんが思いを語った。 冒頭、「私に起こった事を聞いて欲しい。」と会場に伝え、以前に語った「体験談」の様子をビデオで放映した。この体験談は、5年前、本人が大学4年の時に、地元「佐賀」の地で初めて体験を語ったものである。 「父が自殺をしてそれからの生活というのは、本当に私にとっては苦しいものでした」という言葉から始まる。語ることができなくなった父の存在、そして、答えのでない父の死、自責の念。そして、「自分と向き合い、父の死と向き合うことで、後ばかり振り返り、前に進もうとしていなかった自分がやっと、前に向かって一歩ずつ踏み出した」と。そして、辛い体験をしたからこそ身にしみて分かる「人のやさしさ」、その「やさしさ」に救われてきたこと。 そこには、体を震わせながら涙ながらに語る彼女がいた。 そして、再びステージに立ち、医師として社会の一員となった彼女が、遺族、そして今の立場で「生きやすい社会」の必要性について語った。 「自殺を語れる世の中へ。そして自殺が減っていく世の中へ。それが、きっと誰もが『生きやすい』世の中になるのではないだろうか」 そして、大切な誰かを亡くし、心を痛めている方へ「あなたはひとりじゃないよ!」 今苦しんでいるあなたへ「死なないで。あなたを大切に思う人がいるよ。そしてきっと道は開ける」と。その思いを語った彼女に対し、会場は惜しみない拍手で称えた。
第三部は、「パネルディスカッション 〜自殺を「語ることのできる死」へ〜」
パネラーは、
ライフリンク 清水康之さん
遺族代表 古賀寛子さん
佐賀ビッグフット 中尾朱実さん
佐賀いのちの電話 吉木一雄さん
佐賀健康増進課 岩瀬達雄さん
そして、オブザーバーとして、自殺対策推進室の柴田雅人さん。
自死遺族のメッセージを受けて、中尾さんが「体験を語り終え抱きしめた時の彼女の震えを忘れられない。それほど遺族にとって自殺は語ることのできない死である」と、また、吉木さんは「語ることのできない死である「自殺」は、まずは社会への啓発活動が必要であると」語った。 そして、遺族の「分かち合いの場」を今年度から主催する両団体に対し、岩瀬さんは「分かち合いの場」に対する財政的支援、広報などを約束。また清水さんからは全国的に自死遺族が孤立している状況が報告され、「警察と連携するなどした遺族への情報提供の仕組み作り」と、「情報提供のツールとして遺族が必要とする様々な情報をまとめたクリアファイルの作成」などについての具体的な提案がなされた。オブザーバーの柴田さんは、そうした民間からのアイデアを積極的に聞かせていただきたいし、ぜひ対策の中に取り込んでいきたいと述べた。
エンディングでは、健康増進課の岩瀬さんより、佐賀県のメッセージリレー「これから、ここから 生きやすい社会につながる一歩(古賀さんが講演中に語ったメッセージ)」が紹介され、パネラーそして、運営したスタッフ全員でステージに立ち、閉会挨拶を行った。
最後に副知事より「官民、そして県民が一体となって、遺族支援、自殺対策に取り組む」との決意を会場に報告し、閉幕となった。
さてさて、ここからは番外編!
会場を後にし、パネラーそしてスタッフは懇親会会場へ。会話促進剤(アルコール)を入れながら、個々が思い思いに語り合った。目的を同じくして、会場に集った者同士、シンポジウムの会場準備中は、まだぎこちない雰囲気もあったが、ここでは、多くの笑い声が聞かれた。いつしか席を外れ、多くのメンバーと互いの思いをぶつけ合った。 共に行動して生まれる「連帯感」。何よりも、このシンポジウムで生み出したかったキーワード。 必ず次につながる一歩となるはずだ。 懇親会は、ビッグフット中尾さんの乾杯で始まり、県の嘉村さんの一本締めで締めくくった。
中島さん、田崎さん、このシンポジウムを共に創りあげることができた事を誇りに思います。そして、佐賀のメッセージリレーにもあるように「これから、ここから」ですね。